ルパン制作ブログ ルパン座トーク ルパン制作スタッフによる制作裏話

ハンパない作画へのこだわり!

2015.09.04

皆さまこんにちは!テレコム制作進行見習いのナカノンです。

あっという間に9月を迎えました。放送開始まであと1か月です。

楽しみですねー。私は先行して何本か観させていただきましたけど、超!面白いです!

ぜひぜひ楽しみにしてください!

 

さて、今回の「ルパン」では「作画注意事項」なるものが存在するんです。この作品の画のテーマは「セル時代の手書き感のある画作り」!ということで、色々なことに注意を払って作られてます。

 

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今日はホリコ先輩と一緒に、キャラクターデザインの横堀さん、動画検査の与澤さん、勝俣さんにお話しを聞いちゃいます。左から与澤さん、勝俣さん、横堀さんです!

 

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◆ 今日はよろしくお願いします!この「作画注意事項」は作品ごとに用意するものなんですか?

与澤:これまで動画さん向けのものはあったけれど、原画さん向けにここまで詳しく作ったのは初めて。今回は特殊な線を引かないといけないし、原画から雰囲気出して描いていただきたいと思って作ったものね。

◆ どなたが作ったんですか?

ホリコ:初稿を作ったのは私だよ。打ち合せで詰めたことを基に、実物を見ながらいい例悪い例を判断して、分からないところは横堀さんに聞きつつ試行錯誤しながらどんどん加筆していったんだ。言葉の選び方も迷ったね。「太い」だと均一に太くなっちゃうから、「強弱」という言葉を使ったの。強弱をつけるにしても、画面の中のキャラクターがどのサイズより大きかったら強弱をつけて描くかを横堀さんと監督に相談して決めたんだ。

 

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与澤:同じ言葉でも人によって解釈が違うのよ。「太いところと細いところがあって、線が均一ではない立体感のある画を目指してる」ところまで言わないとうまく伝わらない。今でも苦労してるところだけど、動画見本とかも作って頑張ってる。

横堀:自分もそうだけど、絵描きってこういうの何ページもあったら見ないんだよ。だから1枚に情報が入るように、言わんとすることが分かるように作ってもらって。あと線の太さの感じを感覚で伝えるために、使う絵の大きさは実際に描く大きさと同じにしてもらったね。

 

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◆ 強弱の他に、線を引くときのポイントを教えてください!

横堀:「途切れ線」(顔の輪郭などで線が途切れること)だね。途切れ線の位置が1枚1枚微妙に違うとチラチラ動いて見えて、生命力がある感じでいい雰囲気になるんだよ。セルで手描きの頃は、絵の具で塗るから線が途切れてても平気で、絵としての味になってたんだよね。今はデジタルでペイントすると、線が途切れてると色がはみ出してしまう。だから色トレス(主線とは異なり、色鉛筆で描いた動画の線のこと。仕上時にペイント色に変換する)で線を引かなきゃいけない。途切れた線や強弱のある線は手間がかかるからテレビシリーズでやるのは中々難しいんだよね。

 

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横堀:理想としては6Bの鉛筆をとがらせず、筆みたいに使って欲しい。形は多少崩れても、線を潔く引いて輪郭を雰囲気で再現出来ればいい。そういうのがあっての「ルパン」な気がするんだよね。

◆ 渋みがあって、荒々しい感じがカッコイイです!

横堀:「ルパン」はお馴染みのキャラクターだから、これまでとの差別化を考えた時に、特徴のある線と、その線に合わせた背景が必要だと思ったんだよね。思い切って昔っぽく味わいのある、(トレスマシンの)カーボンのような雰囲気を出せたらいいな。

◆ 注意事項を見ると、「塗りつぶし影」「ざっくり影」…影にも色々とこだわりがあるんですね。

 

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横堀:今回は基本的に影なしでやってるから、顔の凹凸に沿った陰影は、演出的に必要なとき以外は基本的にはつけてない。ただ、限られたポイントで影をつけてるよ。首の下や服の深い皺とか、濃い影が落ちるようなところに鉛筆のタッチで影を入れてね。

勝俣:鉛筆の影を入れると、その分絵が締まって見えますよね。

◆ これが「塗りつぶし影」ですね!立体感がありますね。この「ざっくり影」というのは何ですか?銭形が黒く塗られてますけど…

 

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横堀:考え方としては、キャラクターの影じゃなくて、建物の影がキャラクターに落ちた状態だね。

与澤:次元と銭形の帽子影とかね。

ホリコ:次元影ですね(笑)。影といえば、接地影の抜けがなぜか多いんだよねー。

 

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横堀:多分なんだけど、キャラクターに影を入れないコンセプトと接地影とを勘違いしちゃってるのかな、と。影がないと背景との一体感がなくなってしまうから、俯瞰の構図とかだと浮いて見えちゃうんだよね。

◆ 他にもアイシャドウの注意事項があるんですね。

 

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勝俣:最初はなかったんですよ。人によってバラバラに描いてて…アイホール全体に描いてたりとか。何で決まったんですかね?

ホリコ:アイホール全体だと、アイシャドウの色が濃い時にケバくなっちゃうんですよ。なので閉じ目の時のシャドウ基準を作りました。

横堀:始まって何本かやった後だね。

◆ で、ではひょっとして初期の話数だとケバい不二子とかレベッカがいるんですか?

ホリコ:レベッカが多いかも。でもキャラ的にガッツリメイクしててもおかしくないから、失敗っていうわけではないけどね。

◆ こういう注意事項に描かれたことは概ねうまくいくものなんですか?

勝俣:話数が進んできたら皆さん守ってくれてますね。

与澤:原画さんも動画さんも、最初は「本当にやっていいのか」と不安だったんじゃないかな。

◆ なるほど!今のアニメって線が細くて、全体的に線が整ってますからね。

ホリコ:そういう線よりも、作画さんの魂こもった線の方がルパンらしいって思ったんですよね。

横堀:線はこう、背景はこう、ていうスタイルを最初に打ち立てて説明することもあんまりない。そういうのをやってみようっていう話から始めるのは、若い人にはすごく面白かったんじゃないかな。

与澤:私や横堀の世代だと、こういう線を普通にやってた。2B、3Bで強弱つけて引いてたんだよね。勝俣みたいな若い世代はこんなのやったことないでしょ。

勝俣:知らなかったですね。

◆ 実際にやってみて、想定と違ったことはありましたか?

与澤:太過ぎる…解釈の違いで、全体が野太くなっていく話数はあったね。

横堀:途切れ線を効率的に見せるのが難しい。動きが早いシーンで途切れ線があっても、印象に残らないんだよね。ちゃんと描いてればちゃんと見えるってわけじゃない。味を活かせるシーンが作れれば、コンセプトが活かせると思ってる。これは計算して出来るわけではないから、なかなか難しいね。

◆ 最後に、こだわりのシーンを教えてください!

与澤:個人的には、1話で銭形が教会に入っていく手のアップ。あそこ相当加筆したのよ。結構効果的だったんじゃないかな。

横堀:冒頭のシーンだからね。1話は思ったよりも線の感じがうまくいったんじゃない?かなり大変だったから。

与澤:悩みながらやった割にはうまくいったかな。

勝俣:動検してて、動きがいいなと思うことは何回もありましたね。レベッカとルパンがワイヤーアクションするシーンでも、動画チェックすると「おぉ~」っとなったので。3Dとの組み合わせもうまくいってて、好きですね。

◆ ありがとうございました!